店主の四方山話                    TOPへ戻る




  

 第151話 体質に合っていない漢方薬の話


 あなたがのんでいる漢方薬は本当にあなたのお体に合っていますか?


いずれも体質を考えずに処方されてしまって起きた例です。こんな方々も川口漢方薬局にはご相談があります。



 桂枝茯苓丸で貧血が酷くなってしまった例

30歳代の女性で子宮筋腫があり、病院で桂枝茯苓丸が処方されました。3ヶ月程度服用して検査をしたところ、筋腫は少し小さくはなったが、貧血がかなり酷くなっていました。

桂枝茯苓丸を服用してから、生理量が増え、1日目〜2日目の生理痛は減りました。しかし、3日目以降から生理が終わってしばらくの間は、シクシク痛むような感じが酷くなり、めまいやたちくらみすることが多くなりました。不安になったので本当に桂枝茯苓丸が合っているのか?これからも続けて良いのか?疑問だったのでご相談においでになったとのことでした。

この方には、なぜ、生理の3日目以降の体調が悪くなったのかこのように説明しました。

女性の生理周期の中で一番血が不足気味になるのは生理の後半から生理が終わってしばらくの間です。この時期は貧血の検査をすれば、おそらく一番状態が良くないでしょう。めまいやたちくらみは貧血によるものです。また、下腹部のシクシクする痛みも、血が不足するため子宮に栄養が行かず不足ぎみになって起きるものです。桂枝茯苓丸を服用することで、生理量が増えました。筋腫を良くするために悪い血が除かれたが、同時に必要な良い血も失ってしまって具合が悪くなったのです。桂枝茯苓丸は、子宮筋腫などによく使われるが、その働きは、悪い血と悪い水を除くもので、補う働きはほとんど無いのです。あなたの場合は不足ぎみの血を守り補いながら悪いものを取り除くような漢方薬でないと長期的に服用する場合には具合が悪いのです。

ということで、この方には弓帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)という漢方薬を基に、少し工夫を凝らして服用していただくことにしました。この漢方薬は産後の養生にも良く使われます。産後はお産の出血のため血が不足していますし、体内に残った悪い血も除く働きがあるのです。1ヶ月服用していただいただけですが、生理後半のいやな症状はほとんど無くなり、顔色も良くなってきました。



 大建中湯で口内炎がひどくなった例


半年位前から繰り返し口内炎が出来るようになった、という60才代の女性の方の相談です。それ以前も時々口内炎は出来ていましたが軽かったそうです。8ヶ月前に手術を受けた後、腸の癒着による便秘防止のため、ずっと大建中湯が処方されていました。

大建中湯をのんでいると便通は良くなるそうですが、この方の口内炎がひどくなった原因は大建中湯でした。大建中湯は、手術後の腸閉塞の予防や便秘などで、現在病院でかなり処方される機会が多い漢方薬です。しかし、大部分の病院では、処方する時に患者さんの体質の違いなど何も考えていない場合が多いです。大建中湯は、本来、胃腸が物凄く冷えて腹痛が起きるような状態のときに用いる漢方薬です。つまり、腸が冷えている場合に良いのですが、逆に熱を持っていたら具合が悪くなります。

この方の場合には、お体全体が乾燥し、熱を持ちやすい体質だったのです。舌に亀裂がある、皮膚が乾燥している、目が乾燥する、便が固くてウサギの糞のような感じ、辛いものが舌にしみて苦手だといった乾燥体質の典型的な症候がありました。

辛いものが苦手です。舌にしみてヒリヒリして嫌なんです。とおっしゃるので、私は、大建中湯には、山椒や生姜のように激辛なものが主成分なんですよ。舌がひりつくだけじゃなくて胃壁や口内の粘膜も荒れて炎症が起きちゃうのです。とご説明しましたが、病院でも、お薬を出してもらった処方箋調剤薬局でも、全くこのようなことは聞かれなかったし、大建中湯の成分が辛いもので出来ていて、それでで口内炎が酷くなるなんてちっとも知らなかった、とおっしゃっていました。

この方は、大建中湯をやめ、お体を潤しほてりを冷ます働きのある清心蓮子飲と潤腸湯という漢方薬にしてすぐに口内炎がおさまりましたし、便通も良くなりました。今は麻子仁丸と八仙丸という漢方薬を続けてのんでいて、とっても体調が良くなりました。また、辛いものは避け、お体に潤いを与えるような食養生も実践されています。

漢方の専門的な立場から腸閉塞の予防を考えた時にも、本来は体質や症状の違いにあわせてひとりひとり違う漢方薬が適合するので、手術後の腸閉塞の予防=大建中湯ではないのです。腸に熱が強ければ承気湯類を、ストレスなどで緊張が多ければ大柴胡湯が合う場合もありますし、本当にひとりひとり違うものなのです。でも、現実には、体質を考えずに一律に同じ処方をされてしまっているこの方のようなケースは決して珍しくありません。



適切な漢方薬の選定は専門家にお任せください。詳しくはこちらでご相談ください。直接メールでもご相談承ります。kawaguchikampo@nify.com