肝機能障害、慢性肝炎、肝硬変

漢方では、肝機能障害や、慢性肝炎、B型肝炎、C型肝炎、肝硬変を「湿熱の邪
が長い間、体の中に潜んで体に悪い影響を及ぼしている病態」
だと考えます。そ
して、その鑑別のしかたも、体の状態が一人一人異なるため、症状、体質によっ
て西洋医学とは違った視点から「証」というものを決定して、さまざまな漢方薬が
使われます。

初期の慢性肝炎

初期の慢性肝炎では、「湿」と「熱」の邪のうち、どちらの症状が強く現れている
かという鑑別
が、ぴったり合った漢方薬の選定のポイントになります。

(1)熱>湿の場合

湿熱が長い間体の中に潜んでいて、だんだん熱を帯びてきている場合は、体が
ほてる、目が赤くなる、尿の色が濃くなる、のどが渇いて冷たい物をのみたがる
ようになります。舌の色は赤いです。このような場合には、加味逍遥散などを使
います。状況によって、黄岑、連翹、沢瀉、車前子、茵ちん蒿などを加えた方が
良い場合があります。

(2)湿>熱の場合

熱の症状が少なく、湿の症状が強いときは、食欲の減少、便が軟らかい、腹が
張る、体が重だるいようになります。慢性化して間もない状態で、体の抵抗力も
まだ充分に残っている時は、柴胡疎肝湯、小柴胡湯などを使います。

中期の慢性肝炎から肝硬変の初期

「湿」「熱」の邪が体に必要な物を蝕んできている段階です。

(3)気血不足

慢性肝炎が長引いてきますと、「湿」と「熱」の邪によって体が抵抗力を失い、エ
ネルギーの元である「気」や「血」が不足してきます。こうなりますと、脇腹がしくし
く痛み、疲れやすい、食欲が無く食べ物がおいしくない、顔色が悪い、めまいが
する、不眠などの症状が現れるようになります。この様な状態では、帰芍六君子
湯、補中益気湯
などを使用します。

(4)腎陰不足

慢性肝炎が長引いて「湿熱」の特に「熱」の邪によって体が乾燥した陰不足の状
態となる
場合があります。両脇部に腫瘤があり、右脇の灼熱性の疼痛、目がかす
む、耳鳴り、ねあせ、腰がだるく痛い、足腰に力が入らない、夜中に咽が乾燥する
などの症候が現れます。舌は苔が少なく乾燥し、亀裂やしわがある場合もありま
す。このような状態では、一貫煎加減、杞菊地黄丸などを使用します。

慢性肝炎の後期および肝硬変の場合

生体の機能障害のため、さまざまな病理産物がさらに機能障害をひどくしてしまっ
ている状態です。

(5)気滞血淤

さらに症状が長引きますと、気血の不足や腎陰不足という状態に加えて、様々な
病理産物が出来てきます。そのために血が汚れ「淤血」という状況がはっきり現れ
てきます。皮膚の色がどす黒く、毛細血管の拡張や、ひどくなれば静脈瘤なども
出来やすくなります。このような場合は血府逐淤湯などを使用します。

(6)脾土衰敗、管腎虚損

全身の新陳代謝が低下してしまって、症状が極めて重い状態です。顔がどす黒い、
皮膚が暗黒色、脇下に腫瘤があり固定性の刺痛を伴う、胸腹がつかえて苦しい、
非常に痩せてきた、食欲不振、泥状あるいは水様便、元気がない、無力感などの
症状がある非常に深刻な状況です。この時期には、茵陳乾姜附子湯などを使用し
ます。
          

 参考文献:実用中医内科学  中国 上海技術出版社

東洋医学的に、肝機能障害、慢性肝炎、肝硬変の患者さんを分析すれば、状況
に応じてさまざまな漢方薬が用いられることがおわかりいただけたと思います。
症状と体質に合わせ正しい「証」の漢方薬をお使いいただければ、効果が素晴ら
しいだけでなく、副作用も発生しにくいのです。

西洋医学中心の医師の肝機能障害による漢方処方は、ほとんどの場合、小柴胡
湯ですが、小柴胡湯は、水分代謝を良くして体を乾燥させる方向に作用しますか
ら、体が乾燥した状態にある患者さん(皮膚がかさつく、夜中に咽が乾燥する、舌
に亀裂がある、などの症候があります)への使用は、東洋医学的には明らかに間
違いです。





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